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ブックトリップ~人生を変えた“お師書さん”①『カロリーヌの世界の旅』

北海道・余市でエコビレッジを営む坂本純科ちゃんから、「ブックカバーチャレンジ」のバトンを渡されました。 ①一週間の間、一日一冊好きな本の表紙をSNSにアップする、②その際にまた別の誰かにバトンを回す(指名する)、というのが基本のルールのようですが、自分流にアレンジして楽しんでいる人も多いみたい。 久々に自分の本棚を見たらどれもこれも愛しい本だらけで、一冊一冊手にとって開きながら、その本と出合ったころの自分や、読んだ時の氣持ちがありありと思い出され、自分が今までいかに本に育てられてきたかをつくづく振り返りました。 あらためて見つめてみると、 本は私にとって幼いころからずっと私を導き、育て、支えてきてくれた恩師だなぁ… 私を分解したら、これら一冊一冊になるのかもしれないなぁ…! …と心底思えてきて、この際、この「ご本尊」たちに感謝をこめて、ラブレターをつづっていこうかな、と思い立ちました。 というわけで、記念すべき第一冊目は、幼稚園生のころに出合い、今は亡き兼高かおるさんとともに私を「世界一周の旅」へと導いてくれた、大事な大事な“お師書さん”、『カロリーヌのせかいのたび』をご紹介します。

(この本の裏表紙に書いてあった価格は、なんと390円!)

私はこの本に出合ったとき、頻繁に「光化学スモック」のアナウンスが街中に響きわたる東京都新宿区に住んでいて、小児喘息を患っていました。 そのせいかとても引っ込み思案で、とめどなくあふれてくる空想の世界を住処としているような子どもでした。 人と話すより自分の中にわきあがってくる声と会話するのに忙しく、「現実とかけ離れた世界」や「目の前の景色から始まる途方もない物語」を追いかけて遠くまで行っていることが多い子でした。 その世界のことを絵に描いたり、物語の登場人物たちとおしゃべりしたり、その先の物語をいつまでも夢想したりしていて、そんな自分に自分で 「考えていることを口に出すと氣が触れてると思われるから、誰にも言っちゃダメだよ」 と言い聞かせたりしていたのを、4~5歳のころのことにも関わらず、今も鮮明に覚えています。笑 親戚の千代子おばちゃんにいただいたこの本は、そんな私にとって絶好の空想テキストになってくれたのですが、私がことさら興奮したのは、物語が展開する舞台となる場所の「地図」が載っていたこと。

地図といっても、以下のような線と地名の表示が載っていただけなのですが、幼い私にとってはそれが「この世に実在する場所」であることを知らせる情報となり、 「ほんとうにある場所なんだ…!」 と、興奮と質問でいっぱいになりながら、ドキドキしてページをめくっていました。

以下は、特に印象的だったページ。 どのページも、すみずみまでじっくり何度も観察して、読むたびごとにいろんな発見と想像をしたものですが、これらのページはことさら大好きで、私の色彩感覚や好みのデザインテイストの礎になっている氣がします。 短大の卒業旅行で実際にオランダ・アルクマールのチーズ市で以下と同じ景色を見たときは、感動と感激で全身がシビれ、クラクラしました。笑

一緒に行った母も、「カロリーヌの絵本のまんまだね~!」と大コーフン。ふたりで絵本の中にダイブしたような感覚になったのを覚えています。

ページを開くたびに、カロリーヌとその仲間たちは内向的な私を途方もない冒険に駆り出してくれました。 空想好きな少女にとって、そこに描かれている世界に入り込むことはたやすく、そこで私は彼らと笑い、話し、走り、飛び跳ね、見つめ合い、目を見張り、怖がり、抱き合い、時にはジーンと涙して、全身全霊でその世界を呼吸しました。 「発作が来ませんように」とお祈りして眠りに就いた夜は決まって発作に見舞われるので(「発作が来ること」が意識の前提になっているので今から思えば当然の結果ですが。笑)、私は恐ろしい呼吸困難の嵐の中で意識が遠のくたびに意識を体と切り離し、カロリーヌの世界に逃げ込むようになっていきました。 今思えば、そんなことよくできたなぁ~どうやったんだろう…?と不思議ですが、おかげで私には「苦しかった発作の記憶」はほとんどなくて、代わりにカロリーヌとの一体感が心身に色濃く刻み込まれた氣がするのです。 結果的に新宿の光化学スモッグに起因するのであろう小児喘息は、カロリーヌを私の無二の親友にし、その25年後、私は25年間夢見つづけた「せかいのたび」に出発。 バックパックを背負い、フリーランスライターとして雑誌連載やラジオ番組で旅の様子をレポートしながら、6年間6大陸60か国を旅することとなりました。

朝日新聞出版局から発行されていた幻の月刊女性誌「uno!」。キョンキョン、若いですね~笑

プリント写真の切り貼りコラージュと手描き文字で構成された、めっちゃ手間がかかっているカラー見開きの連載『はらみづほの、それいけ!世界一周』。 9回目にして雑誌が廃刊になると知り絶望感にさいなまれましたが、その後この連載がきっかけで連載仕事は3つに増え、しかも有線放送でラジオのレギュラー番組まで持てることに。 この雑誌は私にとって「わらしべ長者」的な喜びをもたらしてくれた“福の紙”です。

扶桑社の月刊女性誌「Luci」。「uno!」の編集者さんがこの雑誌の編集部に移籍し、ふたたび私に声をかけてくださって始まった『はらみづほの、世界ウヒャドヒャ紀行』は、結局旅が終わるまで、3年半にわたり連載されました。 旅先で辛いことがあっても、この連載のおかげで「ネタができた!」とポジティヴ変換でき、金銭的にも精神的にも大いに支えられた、かけがえのないお仕事でした。 イラストは絵本界の巨匠・飯野和好さん。どうしていらっしゃるかなぁ… 当時も今も、巡り合わせのすべてに感謝でいっぱいです。(˘︶˘).。.:*♡

南米大陸を旅していたとき、スペイン語がわからず困っていた「地球の歩き方」のライターさんを助けたことがきっかけでNHK出版を紹介してもらい実現した一年間の連載『くちこみ世界遺産』。 写真・イラスト・手描き文字のコラージュが私のスタイルとなり、当時の私にとって、これらの連載は心底楽しい、喜びに満ちたお仕事でした。

ラジオ番組とセットでやらせていただいていた、有線放送の会員誌での連載。このお仕事のおかげで、アジアでたくさんの音楽と、それにともなう色とりどりの世界に出合うことができました。

おっと、思わず私の旅路に話が飛んでしまいましたが、カロリーヌのせかいに戻りましょう。 この作品の生まれ故郷はフランスで、作者はピエール・プロブストさん。今もフランスの国民的スタンダードとも言える作品のようです。 広告の仕事などをしていた画家の彼がこの絵本を生み出したのは、5歳になった娘にいい絵本を読ませたかったからなのだそう。娘のシモンヌちゃんが、カロリーヌのモデルなのだそうです。 私が旅に出る前、すでに彼は亡くなっていて、フランス国内のお墓の情報を見つけた記憶があるのですが、明確な場所がわからず、旅の中でお参りに行けなかったことが心残り。いつか情報を得てお参りに行けるといいなぁ…(˘︶˘).。.:*♡ カロリーヌ・シリーズは、「せかいのたび」の他に「カロリーヌのおともだち」「カロリーヌのつきりょこう」「カロリーヌのぼうけん」の計4冊があるそう。 私はそのすべてを読んだ記憶があり、本も持っていたはずなのですが、今手元にあるのはなぜか「せかいのたび」一冊だけなので、 もしも他の3冊をお持ちの方とつながることができたら、お話の内容を確かめたり、カロリーヌ談議に花を咲かせたいなぁ…! それにしてもこの絵本、細部まで実に丁寧に描かれていて、ページを開くたびに愛があふれ出してくる感じがします。 私もこんな仕事をしたい。 そんな熱い想いが思わずこみあげてきて、「あぁ、この本はやっぱり私の“お師書さん”だなぁ…!」と、今あらためて、しみじみ感じいっています(˘︶˘).。.:*♡ #Bookcoverchallenge #人生を変えた“お師書さん” #カロリーヌのせかいのたび

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