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亡くなっても、無くなっていないもの

今朝がた、すごくリアルな夢を見た。 夢の中の私はでっかくて古い平屋の日本家屋に10人くらいの人々と住んでいて(その中に父もいた)、同居メンバー数名とともに、でっかい和室にドーンと置かれているでっかい仏壇に亡くなったばかりの母を仲間入りさせるべく、母の遺影や花を飾り、お菓子を供えて忙しく法事の準備をしていた。 その家は誰もが氣楽に訪ねてきて思い思いに過ごせるコミュニティハウスになっているようで、広々とした庭では外国人の旅人たちが野点用の赤い和傘をまるで夏の浜辺に並ぶパラソルのように並べ立て、その下で音楽を聴きながら寝そべっていたり、てんでバラバラのいろんな服装をした老若男女が家のあちこちにいて、食べたり、飲んだり、本を読んだり、おしゃべりしたりしている。 と、突然玄関から「あら!お帰りなさい!」と、ちょっと驚いたような華やいだ女性たちの声がして、それに応えるように「ただいま~♪」と言いながら、母が入ってくるのだ。まるで小旅行から帰ってきたみたいに優雅な笑顔でニコニコしながら、看取った時のやせ細って骨ばった姿ではなく、ふっくらした元氣な頃の姿で。 「どちらに行かれてたんですか?」とか、「あちらはいかがでした?」などという楽し氣な問いかけに明るく答えながら、母は仏壇のある奥の間にだんだん近づいてくる。 母の突然の出現に氣づいた私は仰天し、「え?!」と息を呑んで同じ部屋の向こう側で法事の準備をしていた父を見やると、父も仰天した形相で私を見返している。 私は父に「とりあえず私が遺影を片付けるから!」と目で伝え、母の遺影をサッと後ろ手に隠すや否や、母が仏壇の前に来ていた。 母の遺影はすんでのところで隠したはずなのに、異変を察知して遺影なき仏壇を凝視している母の見開かれた両目は、「え?!私、死んじゃったの…?!」と問いかけている。まるで全身がクエスチョンマークと化したかのような佇まいで。 私はたまらなくなって遺影を投げ出し母を抱きしめ、「お母さん!!!おかあさぁーん!!!おかあさぁーーーん!!!」と叫び続けていた。まるで、その呼びかけを止めたらその時点で母が消えてしまうとわかっていて、絶対にそれをさせまいとするかのように、繰り返し、何度も。 母の背中に触れている指先のリアルな感触。母の体と自分の腕が密着している確かな手ごたえ。母が亡くなる前、実際に母を抱きしめた時に感じた、小さくやせ細って骨ばった体の感触とはまるで違う、しっかりと厚みのあるあたたかさ… それらを生々しく感じながら目覚め朦朧とした私は、「やだ!お母さん死んでなかったんだ!死んじゃったかと思ったよ!!!」と思い、心底安堵したような、悪夢から覚めたような感覚になって息を吐き、その直後、《それは夢で、やっぱり母は亡くなっているんだ》と認識した。 そして、一度引いたと思った波が思い出したように寄せては返し始めたように、「おかあさーーーん!」と小さく何度も何度も叫んで、ふとんの中でうずくまって泣いた。 昨夜は弟が帰ってきて、家族三人でビールを飲みながら焼き鳥を食べ、いろんな話をして盛り上がり、みんなで笑って遅くまで語り合った温かい夜だった。 母の話はその時一度きりしか出てこなかったから、母は「ちょっと!私もいるってことを忘れないでちょうだいよ!」と言いに来たのかもしれない。 昨夜私はとても冴えていて、弟の話のポイントをいつもに増してすばやく理解し、理解する端から打ち出の小づちのようにじゃんじゃんアイデアや言葉が湧いてきて、自分の脳内でものすごいスピードでシナプス結合が起こっているのが見えるようだと感じていたのだけれど、もしかしたらそれは、トンチの効いた会話が得意で名言メーカーだった母の本領とコヒーレント(波干渉・同期・調和)していたからだったのではなかろうか。 母は亡くなったけれど、母の波動エネルギーが無くなったわけではなく、それどころか、もしかしたら母の本領は、体という個体がなくなったぶん、氣体となって個体より格段に高い振動数で我家に漂い、私たちを守り包んでくれているのではなかろうか。 そして体を持つ私たちが呼吸をするたびに、それは私や家族やここを訪れた人々の体内に注入され、細胞に浸透し、私たちにパワーを与えてくれているのではないか… いや、きっと母だけでなくすべての死者の資産として、亡くなったが無くなってはいない彼らの叡智や本領は、大氣中に充満しているのではないだろうか…? だから私たちは突然何かをひらめいたり思い出したりして、ふと、あるいは意を決して、とてつもない飛躍につながる一歩を踏み出したり、無意識のうちに危険を回避したり、ありえなかった無数の創造を、特に意識もせず、日々実行していたりするのではないだろうか。 そんな考えが次々と湧いてきて、心強さ、切なさ、温かさ、ありがたさ…に包まれた。

お母さん、やっと夢に出て来てくれてありがとう。 お母さんの遺体が急に骨になっちゃってから胸の中にできた塞ぎようのない巨大な穴ぼこが、やっとほんわり温もった氣がしたよ。 今日からまたあらためて、私と一緒に生きていってね。 タッグを組んで、コヒーレントして、あの世とこの世を行き交いながら、いろんなキセキを旅していこうね! 2023,1,15(日)


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