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Unforgetable Birthday


朝から夕方まで、家族から「今日は誕生日だな」も「おめでとう」もないので完全に忘れられていると思い、腹が立って悲しい氣持ちでいっぱいだった私。

夕方お見舞いに行った入院中の母はしっかり覚えていてくれて、もうささやき声しか出なくなってしまった声で「お誕生日おめでとう」と言ってくれて、やっと救われる。

母はリハビリから戻ったベッドに横たわりながら、幼い頃から何度となく聞かせてくれた『私を産んだ夜の思い出』を話してくれて、ふたりしてシンシンと雪が降り積もる半世紀前の札幌にタイムスリップ。

泣き出してしまいそうな顔を必死で笑顔にスライドさせて、わざときっぱりと「産んでくれてありがとう」と言うと、母は素直に笑顔になって「そんなこと言ってくれて嬉しいねぇ」と目を細め、

「私はあんたを産んで、嬉しいこと、誇らしいこと、楽しいことが増えたね」 と、ささやき声ながら一言一言ハッキリと“宣言”してくれた。

「そうなんだ。うれしいよ。よかった。ありがとう、お母さん。お父さんも、トモも、私の誕生日なんかすっかり忘れてるみたいで悲しくて腹が立ってたけど、お母さんがそう言ってくれて満たされた」

と言って、笑って病室を出た。

すっかり夜になった外の空氣は冷たくて、目にしみて、胸にしみて、涙が次から次へとこぼれて…

グングン自転車を漕ぎながら涙と胸の中の藍色を年の瀬の夜に飛ばして家に帰り着き、夕食の支度。

いつものように少しの日常会話をして食べ終え一段落すると、「じゃあそろそろ」と言って父が食卓に置いたのは、ケーキの箱。

「覚えてたの?!」

「覚えてたよ。昨日、明日だなぁと思って注文して、食後に出すまでサプライズで黙ってたんだ」

かなしい。さびしい。腹立たしい。

せつない。まぶしい。なつかしい。

びっくり。うれしい。あたたかい…

色とりどりのいろんな氣持ちを味わった、2018年12月30日・日曜日。

生涯、忘れることはないでしょう。(aikoの「カブトムシ」の節で。笑)

母に、父に、弟に、これまで出会ったすべての人と、私を「今」に連れてきてくれたすべての存在に、心から、ありがとうございます💗


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