top of page

クレヨンハウス物語


先日、大好きな場所で旧友と会い

いくつかの心ふるえる体験をしました。

中でも久しぶりに訪れた「クレヨンハウス」では

思いがけず 落合恵子さん にお逢いして

ずっと伝えたかったことを伝え、一緒に写真も…!

★まん中が、作家で、クレヨンハウスの主宰者でもある落合恵子さん。左は20代に通っていたコピーライター養成講座時代からの親友で、物書き友達のIちゃん。

私は自分の著書をクレヨンハウスに置いてもらうのが夢で

「置いてもらえたら、落合さんに直接お礼を伝えたい!」

とずっと思っていたので、夢が叶った記念日になりました。

★3階のミズ・クレヨンハウスのチーフと、冬太り中の私(笑)

★私の著書と、クレヨンハウス発行の雑誌「いいね」

作家である落合恵子さんが主宰するクレヨンハウス

・絵本や、暮らしに役立ついろんな書籍

・オーガニック&フェアトレードの

 食品、雑貨、衣類、おもちゃ

・オーガニックレストラン…

が、計4フロアに配置された40周年を迎えるお店。

私には愛しい思い出がいっぱいの

札幌で暮らし始めてからも

埼玉の実家に帰省するたびに訪れている場所です。

帰省した折、ここに思い切って営業に行き

その後しばらくしてから当時の担当者の方に

「仕入れて店頭に置きました」

とメールをいただきお礼を伝えていたのですが

その後お店に行った時には本が見当たらず

しょんぼりしすぎて確認もせぬまま帰ってきてしまい

それ以来ずっと宙ぶらりんな気持ちでいたのでした。

先日そんなクレヨンハウスで

久しぶりに旧友と待ち合わせることになり

ランチタイムのレストランで落合さんを見かけたので

思い切って話しかけ、自己紹介し

「お店に私の著書を

 置いていただいているはずなんですが…」

と言って書名を伝えると

「あ、その本、覚えてるわ、私が選んだのよ!

 読んでみたいと思ってたの。

 店に置く本は全部、私も一緒に選んでるから」

とのこと。

「ぜひ3階に行ってみて!

 作家さんが来てくれると担当者が喜ぶから!」

との光栄なお言葉に背中を押され

ちょっとドキドキしながら

3階の書籍コーナーに行ってみると…

おぉ!本があった~!ヽ(^o^)丿♪

うれしくて 心に虹がかかり

この本を出版できて本当によかった…!

と じんわり…

本ができるまでの道のりや

かかわってくださった方々の顔を久しぶりに思い出し

あらためて、感謝で胸がいっぱいになりました。

私が最初にクレヨンハウスを訪れたのは、

高校1年生のとき。

倹約家だった父母には珍しく、

新築した実家のカーテンを

青山のインテリアショップに

オーダーメイドすることになり

家族4人でウキウキ出かけたその帰りに

話題だったこのお店に立ち寄って

「焼きりんご」を2人ぶん注文し

「おいしいね~!」と言い合いながら、

4人で分け合って食べたのでした。

生まれて初めて食べたあの甘酸っぱい熱々りんごは

今も私にとって ほかのおやつとは一味違う

食べると、家族みんなが元気いっぱいでウキウキ弾んでいた

懐かしい晴天の休日がよみがえってくる

特別な “タイムマシンおやつ” です。

二度目に訪れたのは、広告代理店のコピーライター時代。

仕事のパートナーで密かな片想いの君だったデザイナー氏が

「絵本てほんとにすごいよなぁ…!

 全然こどもだけのものじゃない。

 アイデアがいっぱいで、教えられることだらけだよ」

と言って、C.V.オールズバーグの絵本を

見せてくれたことがきっかけでした。

★これは、私がことさら魅了されたオールズバーグ作品。読むたびに惹き込まれ想像力をかきたてられる、今も大好きな一冊です。

彼の一言で、幼いころ、自分がどんなに絵本が好きで

絵本に助けられていたかを思い出し

クレヨンハウスのことも久しぶりに思い出して

高校時代ぶりに訪れたのです。

それはちょうど、私が自分の仕事にギモンを持ち

モンモンとし始めていた時でした。

「自分が使ってもいないものや

 いいと思っていないものを

 広告していいのだろうか?

 私の仕事はほんとうに

 世のため人のためになっているのだろうか?」

インスタント食品、化学薬品系生活雑貨、化粧品、たばこ…

大企業から次々と生み出される、幼いころからずっと

「体に悪いもの」と教えられてきたそれらの商品を

“仕事だから”と割切って広告している自分の矛盾が苦しくて

もうその気持ちを ごまかし切れなくなっていたのです。

「私のほんとうにやりたいことって何だろう?

 胸を張って心からできる仕事って何だろう…?」

そんな想いを抱えつつ

久しぶりにこのお店を訪れた時に出合ったのが

クレヨンハウスの開店までのエピソードが綴られた

落合恵子さんの著書クレヨンハウス物語でした。

買って帰って一気に読んで心がふるえ

「私もいつかこんなお店を持ちたい!」という

想いが募って眠れなくなったその晩

私は深夜にベッドから起き上がり

落合さん宛てにほとばしるように、本の感想と

クレヨンハウスのようなお店をやるには

どうしたらいいか教えてください!という

突拍子もないリクエストを熱く書き

翌日その手紙を投函したのです。

書いたことで自分の気持ちは整理され

もともと返事は期待していなかったので

フィーバーは次第におさまっていったのですが(笑)

その晩のことは特別な記憶として胸に残り

「いつかクレヨンハウスのようなお店を」という想いは

「いつか世界一周を」という想いと同じ宝箱に収められ

私の心の神聖な場所に供えられました。

(その後、このお店で体験した懐かしい絵本との再会と

 片想いの君への失恋が、

 私を世界6大陸60カ国6年間の旅に

 踏み出させてくれるのですが、

 そのお話はまたいずれ…笑)

モンモンとしていた広告作りへの気持ちは

相談相手になってくれた父の

「よくぞ大事なことに気づいたな。たいしたもんだ!

 それで、おまえは今いる場所で

 現状を変えるためにできることを精一杯やってみたのか?

 辞めるのは、それからでもいいんじゃないか?」

という言葉によっていったん片がつき

結局私はその後も数年間

新たなチャレンジ精神に支えられながら

コピーライターの仕事を続けることになるのですが

この出来事を機にクレヨンハウスは私の心の拠り所となり

好みの絵本を店内のテーブルで自由に読めるサービスや

リビングルームのような雰囲気や

おいしいオーガニックランチに惹かれ何度も足を運んでは

企画のアイデアや見識を広げるきっかけを

たくさんいただくようになったのでした。

そんなある日、手紙を送ってから約一年後の秋のこと…

遅ればせの夏休みでひとときNYへ行き

東京・三鷹のアパートへ帰り着いた夜

部屋のドアを開ける前に開いた郵便受けの中に

私はクレヨンハウスのマークが印刷された

白い封筒を見つけました。

「?」と思って裏を見ると

そこには青い万年筆で「落合恵子」と手書きの文字が…!

息を呑み、高鳴る鼓動に追い立てられるように

郵便受けの前で立ったまま封を開け

白い便箋になめらかに流れる青い万年筆の文字に

夢中で目を走らせると、こう綴られていたのです。

「お手紙をありがとうございました。

 お返事を、と思いながら遅くなってごめんなさい。

 鬼の霍乱で珍しく体調を崩し、

 入退院をくり返していました。

 いつかクレヨンハウスのようなお店を持ちたいとのこと。

 応援しています。

 私よりお店の運営に詳しい担当者を紹介しますので

 ぜひ直接話を聞いてみてください。

 お身体に気をつけて、夢に向かってがんばってね。

 いつかお目にかかれるのを楽しみにしています」

興奮で眠れない夜を過ごし、

翌朝クレヨンハウスに電話して担当者の方の名を告げると、

「落合から聞いております」とのこと。

かくして私は後日その担当者の方から

本の仕入れやレストラン経営に関する注意点など

リアルな情報やアドバイスを、なんと1時間以上

一対一でレクチャーしていただいたのでした。

感謝で胸いっぱいになりつつ

それまでとは違う特別な親しみや

尊敬と希望の武者震いに満ちた心持ちでお店を後にした私は

クレヨンハウスが建つ小路から、

西陽がまぶしい夕方の表参道に出て

横断歩道で信号待ちをしていました。

すると目の前に一台のタクシーがスーッと停まり

開いたドアから出てきたのは…

「落合さん!」

ふりそそぐ西陽を受けつつ振り向いた彼女に

「私、お手紙を書いてお返事をいただいた、

 はらみづほです!

 おかげさまで今、Tさんとお会いして

 クレヨンハウスのお話をお聴きしてきました!」

と夢中で伝えると

驚いた落合さんは晴れやかな笑顔になって

「まぁ、そうなの!会えてよかったわ~!」

と両手を広げ、私をギュッとハグしてくれたのです。

キラキラ光る笑顔の粒を西陽の中にちりばめながら

薄手のコートの裾をしなやかにひるがえして

クレヨンハウスの方向へ去って行く彼女の後姿を

まぶしく見つめつつ

私は金色の光が胸いっぱいに広がっていくのを

うっとりと感じていました。

それはもう20年以上前のことで

落合さんはすっかりお忘れだと思いますが

それ以来クレヨンハウスが

ことさら特別な場所になった私にとって

先日のできごとは、私のクレヨンハウス物語の

うれしい「続編」になりました。

そして、きっと生きている限り

物語は無限の可能性とともに 続いてゆくのだと

あのときの金色の光が、ふたたび胸に満ちました。

アナウンサーから始まり

作家として驚くほど多くの作品を書き

文芸とモノと食で暮らしを軸に社会を耕し

文化と命をつなぐお店を40年も営み続け

71歳にしてオーガニックな服作りも広め始めた

落合恵子さん。

私がクレヨンハウスのようなお店を始めるのは

来世になるかもしれないけれど(笑)

幼稚園のころ読んだ絵本が

30歳の私を60カ国の旅へ導いてくれたように

落合さんの「クレヨンハウス物語」が

私や多くの人々の人生に

それぞれの「クレヨンハウス物語」を刻んでいるように

本を出版してからずっと願っていた夢が

4年越しで ふわりと叶ったように

想いの熱は、きっと時空を超えて物理に作用し

岩を穿つ雫のように人知れず確実に現実を動かし

ある時きっと目に見える変化を示してくれるはずだから

あせらず、あきらめず、ありのままに

消せない望みは、望み続けようと思います。

私好みにカスタマイズされた

居ごこちのいい札幌の自宅を離れ

TVの音や、片付けることが許されないモノがあふれる

私にとって心地よい環境とは言いがたい実家で

老いや、病や

両親の変わらぬ頑なさがもたらすものへの

苛立ちや 悲しみや

彼らの今に自分の未来を見る恐怖を日々感じつつ

家事や できるサポートを模索しながらやり

グルグル、モンモンしたあとで結局

「やっぱり悔いなく親孝行したい」

という気持ちに立ち戻る

…という2ヶ月を過ごしてきた私にとって

今回のクレヨンハウスでのできごとは

ことさら大きな励ましを与えてくれたギフトでした。

老いた両親のことから文学の話まで共感し合える旧友に

安らかな場所と色とりどりのオーガニックエネルギーを

与え続けてくれているクレヨンハウスの皆さんに

私の希望の星である落合恵子さんに

私を生み、育て、今も生きていてくれる父母に

これを読んでくださっているあなたに

そして

そんなすべての命と悲喜こもごもをのせて

今このときも宇宙をめぐりゆくこの星に

あらためて 心いっぱいの感謝を贈ります。

私もこの懐深い星のエネルギーを受け継ぐ一粒として

命を与えてくれた いちばん身近な両親に

この感謝を あたたかくめぐらせてゆけますように…


bottom of page